キンコーズが本社移転にかかるCO2排出量を徹底計測
〜印刷屋がゼロから創る、サステナブルの新基準〜

キンコーズは、2025年8月に本社オフィスを移転いたしました。今回は単なる拠点変更にとどまらず、「環境配慮型オフィス」への大胆な転換を図る絶好の機会と捉え、移転作業に伴うCO2排出量を、業界に先駆けて極めて詳細に計測するという独自の挑戦を実施いたしました。
この取り組みは、当社のMissionである「期待を超えるオンデマンドソリューションの提供を通じ、サステナブルな社会の実現に貢献する」という理念に基づいています。
私たちはこれまでも、お客様のビジネスをサポートするオンデマンドプリントサービスを通じて、「必要な分だけつくる」「無駄をつくらない」という考え方をベースに、環境に配慮した資材利用や省エネルギー化に努めてまいりましたが、今回は、そのコミットメントをさらに一歩進め、環境負荷の徹底した見える化に挑戦しました。
本取り組みは、株式会社地球中心デザイン研究所様によるプロジェクトのコーディネート、またK&ESG株式会社様によるCO2排出量計測の専門的なサポートをいただくことで実現いたしました。両社の知見と協力が、この挑戦を力強く後押ししています。




【新しい基準を創る。CFP算定への熱意】
建物の施工や改修におけるCO2排出量算定には、現在、国土交通省を中心にルール整備が進められている段階で、現時点では、算定義務や強い要請はない状況です。しかし、報道などで「建築や建物の改修はCO₂排出の大きなホットスポットである」と目にし、「ならば、私たち自身が行動し、新たな基準を創ろう」と考えたことが、この挑戦のきっかけです。
移転業者様の公開資料やイベント業界の算定ルールを参考にしながら、キンコーズでは、算定方法を整理・構築いたしました。 印刷を主業とする当社にとって、オフィス移転のCO₂算出は本来の事業範囲外ですが、だからこそ主体的に算定に取り組み、客観的な数値を示すことに大きな意義があると考えました。 今回得られた知見は、今後、本業であるオンデマンド印刷・制作事業での排出量算出にも活かし、将来的には事業活動全体でのCO₂排出を体系的に把握・管理していくための基盤づくりに繋げていきます。
今回のレポートでは、総排出量に加え、「1㎡あたりのCO₂排出量」も開示。
今後、他社様がオフィス移転を検討する際の具体的な指標、参考データとして活用いただけることを目指しています。
【計測概要】
「オフィス移転」という一見限定的な行為を、環境配慮の観点から見直し、移転に伴う全工程のCO₂排出量を“ゼロから算定”することに挑戦しました。


【「やるなら徹底的に」精緻な算定へのこだわり】
一般的なCFP算定では、全体の環境負荷に占める割合がごく小さい要素については「カットオフ(算定からの省略)」が認められています。
しかし、私たちは「どうせやるなら徹底的に」という姿勢のもと、できる限り精緻な算定にこだわりました。
例えば、移転準備に伴うパソコン作業や会議時間まで、感覚的な推測ではなく、活動量を都度収集・記録。これにより、より現実に近い排出量を算出しました。また、作業を担っていただいた業者様にも直接ヒアリングを行い、「見積書ベース」ではなく「物量ベース」での算定を実現。施工や輸送など工程が多岐にわたる部分についても、輸送管理シートや出勤表を活用。電話での聞き取りを通じて、実査に近い信頼性の高いデータ収集を実現しています。




【算定結果】

総排出量は 約65,494kgCO₂(1㎡あたり約115kgCO₂)。
施工工程が最も多く 65.6%(42,947kgCO₂) を占め、次いでシステム/ネットワーク工事が 23.4%(15,312kgCO₂)、廃棄工程が 10.8%(7,069kgCO₂) でした。
特に中項目別では「造作工事(17.1%)」「電気・照明設備(16.5%)」「ネットワーク工事(18.6%)」が高い割合を示し、施工とネットワーク関連が全体の約5割を占めています。

【お祝い花の代わりに能登へ植樹を】
今回の移転に際し、祝い花の代わりに、認定NPO法人環境リレーションズ研究所が運営する「Present Tree」を通じて、能登への植樹寄付を実施しました。
皆さまからのご寄付と当社の寄付を合わせ、コナラやクヌギなどの植樹を行い、環境への還元を図ります。この植樹が、能登の復興の一助となることを心より願っています。

【意義と今後】
オフィス移転におけるCO₂算定の明確なルールがない現状において、本取り組みは“業界横断的な「新しい基準づくり」”を目的とした試みです。
今後は、得られたデータをオープンに共有し、他社が環境配慮型の移転を行う際のベンチマークとして活用いただけるよう推進してまいります
【持続可能な社会の実現へ。キンコーズの挑戦はつづく】
今回の知見を活かし、今後も事業活動全体における環境負荷の低減に努めてまいります。
全国の店舗への共有や社員一人ひとりの意識向上を通じ、日常業務での行動変容を促進していきます。
また、資材調達から製造、提供に至るまで、サプライチェーン全体でのサステナビリティ向上を目指します。
キンコーズ・ジャパンは、「想いを創り、伝えるに寄り添い、世界に彩りを〜オンデマンドソリューションで叶える〜」というVisionのもと、
持続可能な社会の実現に貢献する企業として、これからも挑戦を続けてまいります。

【新本社オフィス概要】
所在地:〒108-0073 東京都港区三⽥ 3-4-10 リーラヒジリザカ 3 階
業務開始日:2025 年8月12日
【株式会社 地球中心デザイン研究所について】
地球中心デザイン研究所は、「サステナビリティ×クリエイティビティ」を軸に活動するクリエイティブエージェンシーです。人間中心の価値観から一歩進み、環境や他の生物、多様な生命の視点を取り入れながら、地球全体をステークホルダーと捉える「地球中心デザイン」の思考に基づき、社会やビジネスの再設計を目指しています。企業ブランディング、CI/UI/UXデザイン、映像・空間デザイン、新規事業開発、地方創生など幅広いプロジェクトに取り組み、持続可能な未来の実現を支援しています。
https://ecdtokyo.jp/
【K&ESG株式会社について】
K&ESGは、ESG情報開示および脱炭素経営を、業務プロセスの整理から可視化、認証取得に至るまで一気通貫でサポートする会社です。特に、欧州法規対応やEPD・EPEATに関連するCFP/LCA算定、財務インパクト評価に強みを有しています。社名の“K”は、明治期に活躍した哲学者・清沢満之氏の頭文字に由来しています。
https://k-esg.jp/