無断転載と引用はどう違う?印刷物を扱う際に気を付けたい著作権豆知識
インターネットの発達に伴い、より一般認知度が高まった「著作権」。著作権と聞くと、音楽や映像、インターネット上のコンテンツなどを連想される方も多いと思いますが、印刷物も著作権と無関係ではありません。
知らず知らずのうちに著作権を侵害し、重大なトラブルに巻き込まれてしまう危険もあるため、今後印刷物を制作する機会がある方は著作権に対する理解を深めましょう。今回は、著作権の基礎知識とともに、分かりづらい無断転載と引用の違いについてご紹介します。
そもそも著作権って何?
著作権とは、音楽や映像、小説などの著作物を創作した著作者に与えられる権利で、人格的利益を保護するための「著作者人格権」と財産的利益を保護するための「著作財産権」に分けられます。
基本的に他者の著作物を利用する際は、著作者の許可が必要です。たとえ一部であっても他者が無断で使用すると著作権法違反となります。後で「著作権について知らなかった」と言っても、それでは済まされません。
ただし、著作物の使用に関しては著作者の権利が一部制限される可能性もあります。私的目的の複製や図書館における複製がその一例です。また、引用に関しても要件を満たせば認められます。
引用する際に満たすべき3要件
引用とは、他者の著作物を自分の著作物に取り入れることを指します。引用は他者の著作物を複製、コピーする行為にあたりますが、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」(著作権法32条1項)であれば可能です。
この「公正な慣行」および「引用の目的上正当な範囲内」とは、主に以下に挙げる3つの観点から判断されます。
1つ目の観点は「主従関係」です。引用する側とされる側では、質量ともに主従関係がなければなりません。すなわち、自分の著作物が質量ともにメインとなり、引用部分はあくまで自著の主張や内容を補強するためでなければならないのです。
2つ目は「明瞭区別性」です。自分の著作と引用部分が明確に区別されていなければなりません。具体的には、引用部分をカッコで囲っておくことや、著者名やタイトルなどを併記し出どころを明示する必要があります。
3つ目は「必然性」です。自分の著作の主張や内容を補強するために、引用部分が必然でなければならないケースです。
これらの3つの観点から見て問題がなければ、たとえ著作者の許可を取らなくても、引用することができます。
引用と混同されやすい「転載」
引用と同じく他者の著作物を複製(コピー)する行為でありながら、似て非なるものが「転載」です。転載とは、著作物をそのまま転用することを指します。引用は先ほど挙げた3要件を満たしていますが、転載はこれらの要件を満たさないという違いがあります。
しかし、転載がまったく認められないわけではありません。転載が認められるケースも存在します。例えば、著作財産権の保護期間が切れている場合が該当します。著作財産権の保護期間は原則として著作者の「生存している期間+死後50年間」であり、この期間を過ぎた著作物は転載が可能です。
また、行政の広報資料などの転載(著作権法32条2項)、新聞の論説を他の新聞に転載すること(同39条)も認められています。
行政の広報資料などの転載とは、具体的には国・地方公共団体の行政機関、独立行政法人の広報資料などを新聞や雑誌などの刊行物に転載する場合を指します。ただし、転載を禁止する旨の表示がないことが条件です。また、転載する際は出どころの明示が必要です。
おわりに
今回は無断転載と引用の違いについてご紹介しました。印刷物で他の著作物を利用したいという場合も少なくありませんが、著作権法で認められている例外などを除き、基本的に他者の著作物を利用するときは許可をもらう必要があることを覚えておきましょう。

Kinko'sお役立ちコラム編集部

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