PDF入稿のメリット・デメリットとは?入稿データの作り方もご紹介
長い間、印刷に理想のファイル形式といえばepsやaiとされてきました。
しかしそれはもう過去の話というのはご存じでしたか?今はほとんどの印刷所がPDF入稿を推奨しています。
「PDF入稿が推奨されている理由って何?」「PDF入稿といってもよくわからない。どうデータを作ればいいの?」という方にもわかりやすく、PDF入稿について解説します。
目次
PDFとは
そもそもPDFとは何なのでしょうか?
なんとなく日常的に使用していても、実際何かと聞かれると困ってしまうこともあるのではないかと思います。ここで改めてPDFについて説明しておきましょう。
PDFはアドビシステムズが開発したフォーマットで、正式名称は「Portable Document Format」。文字や画像などを制作者が配置した通りに保持することができるのが大きな特徴です。
普通どのファイルも配置した通りになるのでは?と思われる方もいるかもしれません。
例えば一般的によく使われているExcelやWordも、違うPCやタブレットで開いてみたらレイアウトが崩れてしまった、意図しないところで表示がずれてしまった、という経験があるのではないでしょうか。
これはマシンごとに解像度や表示設定が異なっているためで、すべてのPCに合わせてこれらのファイルを作ることはほぼ不可能といえます。
しかし、PDFで保存すれば異なる環境のPCで開いてもレイアウトが崩れることなく再現・印刷することが可能です。つまり、PDFは印刷に特に向いているフォーマットなのです。
PDF入稿のメリット
レイアウトが崩れない
PDF入稿の最大のメリットは、前述の通り制作者の意図したレイアウトが崩れないという点です。
当然、制作したPCと印刷所のPCではOS、解像度、表示サイズ、ソフトのバージョン、インストールされているフォントの種類等環境が異なるので、Illustratorのepsやaiファイルであっても思わぬトラブルが起こり得ますが、PDFならこれを避けることが可能です。
特にIllustratorの場合、フォントのアウトライン化を忘れるといったミスをしがちですが、PDFはフォントを埋め込んでしまうので別途アウトライン化する手間が必要ありません。
データを小さくできる
さらに、PDFはデータのサイズを大幅に小さくすることができます。
そう聞くと品質が劣化するのでは?と心配な方もいるかもしれません。
しかしPDF出力時に適切な手順を踏めば、品質を損なうことなく、1/3から1/10までデータを軽くすることもできるのです。
epsやaiといったネイティブデータだとかなり大きな容量になってしまい、アップロードに時間がかかったり、アップロードに失敗したりすることがありますが、PDFならそういったストレスからも解放されます。
PDF入稿だと優遇されることも
PDF入稿のメリットはこれだけではありません。
近年ではPDF入稿で割引やポイント還元をする印刷所が増えてきました。
というのも、印刷所の出力機の主流もかつてのPostScriptからPDF準拠のものに変わってきているのです。先述の通りPDF入稿だと入稿ミスが大幅に減り、印刷所としても出力エラーが起こりにくいため、データチェック等の手間を減らすことができるようになったのです。
割引の有無や適用条件、割引率は印刷所によってさまざまなので印刷所選びの参考にしてみるのもおすすめです。
PDF入稿のデメリット
修正時に手間が掛かる
ではPDF入稿は万能か?というと、やはりそれなりにデメリットもあります。
まず、PDF形式のままでは修正ができないので、再入稿したい場合には新たにPDF書き出しを行わなくてはなりません。
そのため、元のネイティブデータのファイルはそのままで保存しておく必要があります。作業用と入稿用でファイルの数が少し増えるのもデメリットといえるかもしれません。
埋め込みできないフォントもある
メリットの項でフォントが埋め込まれるのでアウトライン化しなくて良いという点を挙げましたが、一部埋め込みできないフォントがあります。
何のフォントが埋め込みできないかというのは事前に確認するのは難しく、PDF出力後にAdobe Acrobat等で開いてフォントが「埋め込み」または「埋め込みサブセット」になっているかどうかを確認しなくてはなりません。
これが埋め込みできない場合は、意図しないフォントで再現される可能性があるため、別のフォントに変更するといった対処が必要です。
変換時に注意が必要
IllustratorからPDFに変換すると、色味が変わってしまったり、画像の解像度が下がったりするというケースがあります。
メリットでも少し触れましたが、正しい設定をすることでほとんどは対処できますが、やはり実際に入稿する前にPDFを元のデータと並べてきちんと自分でもチェックする必要はあります。
ただ、多くのケースは正しい設定で回避できますので、次の項目で説明していきます。
失敗しない入稿用PDFデータの作り方
では失敗しないためにはどうしたら良いのでしょうか?ここでは入稿用PDFデータの作り方を具体的に解説していきます。
まず、IllustratorからPDF書き出しの設定ですが、「別名を保存」から「Adobe PDF」を選択します。
入稿予定の印刷所のサイトに推奨設定がある場合はそれに従ってください。
特に記載がない場合は、一般の項目で
・PDFプリセットを「PDF/X-1a:2001(日本)」
・準拠する規格を「「PDF/X-1a:2001」
・互換性のある形式を「Acrobat 4(PDF 1.3)」
・圧縮の項目ではすべて「ダウンサンプルしない」
・カラー画像とグレースケール画像の圧縮は「ZIP」
・白黒画像は「CCITT Group 4」
を選択します(下記画面参照)。
デメリットで紹介した色味が変わってしまう場合ですが、これはまずIllustratorとPDFの閲覧に使用しているソフト(Adobe ReaderやAdobe Acrobat)のカラー設定が異なっている可能性があります。
まずはIllustratorのカラー設定を確認します。
編集メニューからカラー設定を開き、作業スペースのCMYKの箇所を確認します。
続いて、PDF閲覧ソフトの編集メニューから環境設定、カラーマネジメントを選択し、同じように作業スペースのCMYKの箇所を確認し、Illustratorと同じものが選択されているか確認してください。
入稿予定の印刷所が決まっている場合は、サイトに推奨設定が記載されていることが多いので確認してそれに合わせるのがベストですが、印刷用PDFでは一般的に「Japan Color 2001 Coated」が望ましいとされていますので、特に指定がない場合などは両方これを選択しておくのが良いでしょう。
この方法で解決しない場合や、PDF閲覧ソフトでカラー設定を変更できないケースもあります。
この場合はIllustratorからPDF書き出しを行う際に、オプションで出力のカラー変換の項目を確認してください。カラー変換は「出力先の設定に変換」、出力先は先ほどの方法で確認したIllustratorと同じものを選択、プロファイルの埋め込みは「出力先プロファイルを含める」にして保存します。
出力後のPDF確認のポイントはフォント、サイズ、画像です。
デメリットでも挙げたフォントは何も表示がなければOKですが、フォントの表示がある場合は埋め込まれているかの確認をもう一度行いましょう。サイズはファイルメニューからプロパティ、概要の欄を確認し、ページサイズが合っているか確認します。
最後に画像ですが、100%ではきれいに見えても実際には劣化していたり、必要な加工が消えていたりということがまれにあります。
目安としてPDFの表示倍率を400~500%にしても抜けがなく、粗く感じなければ大丈夫でしょう。
おわりに
今回は、印刷のPDF入稿についてご紹介しました。今や印刷の主流はPDFであること、そのメリットやデメリットを理解したうえで適切なデータ作成を行えば、PDFは利用者にも印刷所にも利点のあるwin-winのフォーマットであるといえます。
最初の設定などは少し面倒に感じるかもしれませんが、一度設定してしまえば後は同じものを使い回せるのでおすすめです。ぜひPDF入稿に挑戦してみてください。
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Kinko'sお役立ちコラム編集部

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